法師温泉の帰りに、新潟に足を伸ばしました。いくつかの建築や施設に寄って見ましたが、中でも印象的だったのが、松之山の森の学校「キョロロ」でした。
建築家 手塚貴晴+手塚由比さんの設計です。アートトレンナーレと名づけられ芸術による町おこしの一環として、松之山の山の中に建てられていました。とにかく山深いところで、たどり着くのに大変な道のりでした。冬は4mの雪に埋もれるそうです。
駐車場からの印象は、コルテン鋼のさびが全体を覆い、また不整形な壁屋根、ランダムな窓、そして左端にそびえる塔など、ここから全体の形はうかがえません。中にある全体模型をみると、なにか蛇が鎌首をもちあげているような形です。
すべては冬の積雪に対しての対応によって決定された印象です。雪に埋もれても耐えられる強度、そして対候性の確保。コルテン鋼と分厚いアクリルの組み合わせで、雪のなかというより水族館といったほどの、水密性を持たせることが可能となったのでしょう。また10年後もほとんど変わらない形でしょうから、外壁や防水補修など必要のないメンテナンスフリーで経済負担は少ないと思います。
造形的には非常に面白い形で、周りがすべて山深い、みどりに囲まれた中に得体の知れない、さびついた物体が横たわっているという感じで、何か廃船がそこに置かれているといった印象です。そう、建築というよりそのものが彫刻作品といった形です。森の中の大きな彫刻の中がたまたま展示が出来たり、トイレがあったりといった感じで設計者の意気込みがうかがえる力作です。
多くの子供たちがここを訪れ、自然を体験し、この芸術作品に触れ、より感性豊かに育っていく事を願わずにはいられませんでした。
帰りの山道の周りには、美しい棚田がひろがりこんなところまでと思うほど、狭いところにも稲穂が風に揺れていました。この美しい田園風景こそ真に残さなければならない日本の原風景だと思います。