吾妻川上流に今八ツ場ダムの建設が急ピッチで進んでいます。そのダムのために沈んでしまうことになった神社の移転新築の設計の話があったのが去年の12月ころ。
現地を訪れると、杉、檜の巨木の中にこじんまりと社殿が建っていました。このあたりの神社としては比較的質素につくられ、またかなり痛んでいました。入母屋の拝殿、切妻の幣殿と本殿、やねは鉄板葺きでした。
移設新築先の場所は小高い丘の上で、ダムが眼下に見下ろせる場所です。一気に日の目を見た感じで、まぶしいほどです。
新築の拝殿は入母屋の銅板葺き、向杯柱は赤味欅の8寸角、海老虹梁、虹梁とも欅とし柱は7寸角の無地の吉野檜でそれ以外の材料は米ヒバ、2重垂木は5寸間隔です。幣殿は低く屋根下に収め、本殿は切妻の銅板葺き、壁はヒバの板張りとしました。
隣には社務所を併設し、氏子の集まりには重宝な大きさです。役員の人達とも何回となく面談しましたが、まだまだ日本もすてたもんじゃないなーと思います。ここにはまだまだ人と人のつながりが密接に有り、神社というものを通して地域の人達が集い合うといった営みがしっかりと残っていました。それを象徴する立派な社が完成です。
帰りに吾妻渓谷に寄ってみました。秋の雨を集め川はとうとうと流れ、木々はいっぱいの緑で、そのあいだの巨岩とのコントラストが見事でした。この渓谷がダムに沈んでしまうのはなんとも寂しい限りですが、その補償で仕事が発生しここに居るというのは、複雑な心境でした。
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