いつの間にか、私たちは空を見上げることを
忘れていました。
親子で「ああ、夕焼けがきれい!」と見とれ
ることも、なくなりました。
きっとあのころ、この煙突から出る煙を見な
がら働く人の姿を思い、雲の変化や木々の
色、横切っていく鳥たちに、季節を実感した
ことでしょう。
1本の煙突が、暮らしのリズム感を届ける
絵である時代でした。 文 原 佑典